初恋は海に還らない
最後の夏




 ──夏休み最終日。天気は快晴。空には大きな入道雲が浮かんでいる。
 

 私は車に荷物を積み終え、祖父母と会話をする両親から離れ、見送りに来てくれた洸と理玖に話し掛ける。



「帰りたくないな」
「何だよお前、都会に住んでるくせに贅沢言うな」
「私はこの街のが好きだし」
「わけわかんな」
「そっちこそ」
「お前ら、最後に喧嘩すんなよ」



 理玖とはこの短期間で、昔からの友人のように距離が縮まった。理玖は都会が羨ましいからいちいち突っかかって来て、口論になるまでが最近の流れだ。


 けれど、それも今日限り。次にここに来れるのはきっと冬だ。


 ポケットに手を突っ込み、気怠げな理玖に笑い掛ける。



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