社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***

 一瞬、くるみが何を言ったのか理解できなかった実篤(さねあつ)だ。

「え……?」

 思わず間抜けな声を出したら、くるみが泣きそうな顔をして実篤を見上げてきた。

「実篤さん、うち、手ぇ出すの躊躇(ためろ)ぉーてしまうほど魅力ない? 付き合い始めて一ヶ月以上……キスもしてくれんのんはうちが子供っぽい所為(せぇ)なん?」

 畳み掛けるように言いながら、実篤の手をぎゅっと握ったくるみの手が小さく震えているのを感じて、実篤はハッとした。

 暖房を付けた応接室と違って廊下は寒い。
 だけど、くるみのこの震えはきっとそれだけじゃないはずだ。


「お願いじゃけ……イヤって言わんちょいて? うちを拒まんといて?」

 実篤はくるみに握られた手をかわして、逆にもふもふの手で包み込むように挟みこんでから、くるみの顔をじっと見つめる。

「くるみちゃん、俺……! ホンマごめんっ!」
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