社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 寝室と違って居間にはテレビもあるし、考えてみれば寝室で待つのは「いかにも今から致す気満々です!」と構えているようで、実篤(さねあつ)自身でもハードルが高いように思えた。

 そんなことを思いつつ、実篤が応接室兼居間の(ふすま)を開けたら――。


「〝しゃねあちゅ〟しゃん、(おしょ)ぉーい! うち、待ちくらびれましたけぇ〜」

 部屋の中からまろび出るようによろめきながら出てきたくるみに、何の前触れもなく真っ正面からギューッ!とハグされてびっくりしてしまう。

「くっ、くるみちゃん?」

(ちょっ、待っ。え!? ――酒っ?)

 見れば、寝室に移動する前に居間のテーブルに載せておいたビールが二缶、開封されて机上に転がっている。

 なのにつまみ――ポテトチップス――の袋を開封した様子はなくて。

(くるみちゃん! 空きっ腹に酒入れたんかぁー!)

 思わず心の中で叫んで天井を仰いだ実篤だ。
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