社屋の戸締りとセキュリティシステム始動の操作をして田岡や野田と別れた実篤(さねあつ)とくるみは、店舗横の来客用駐車場とは違う、少し離れた場所にある従業員向けの駐車場へ向かった。

 実篤にはよくわからないけれど、くるみが言う〝移動先〟へは、実篤の車を使うことになったのだ。


(さむ)うない?」

 ロングコートを羽織っているとはいえ、時節の挨拶で「秋冷の候」から「晩秋の候」へ切り替わるあたりの肌寒い季節。
 日中はそうでもないけれど、日が落ちると空気がグッと冷え込むのを体感するようになる時分だ。

 女の子は身体を冷やすと良くないと妹の鏡花(きょうか)がよく騒いでいたのを思い出して、すぐ横を歩くくるみをいたわったら「大丈夫です」と小さな声が返る。

 実篤もさすがにオオカミ男(あの姿)のまま外をうろつく勇気はなかったので手袋と耳を外してコートを羽織ってはいるけれど、もしもくるみが寒いと震えるなら、上着を脱いで貸すことも躊躇わない覚悟はあった。