eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
まぁ、オンラインの話でだけど。

0.1秒……いや、それ以下の速さで戦うこのオフライン大会。

私は攻撃の出だしが見えている。
タイミングを合わせることができる。

ムチの攻撃判定が消失するタイミングで私はダッシュし、攻撃を避け、画面端にいるルナをクナイで切り刻む。そのまま忍術を発動し、場外へと弾き落とした。

読み合いが五分になっても、ちゃんと読み合いを続けていれば勝負はわからなかったのに……。

最善と思える手に固執したあまり、ツバキさんはこの勝負を捨ててしまった気がする。

私はコントローラーをテーブルに置いた。

静まり返る会場。

間を置いて、まるで爆発するかのような歓声が響いた。


「ハル選手、勝利しました! 人間業とは思えない技術! 一秒あるかないかの早業! うますぎる! これ以上の言葉が出てきません! 青龍杯優勝は、ハル選手だあああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」


クラッカーの音と、勝利のBGMが大音量で流れる。


ドッ……と今になって実感が出てくる。


私、優勝したんだ。

優勝、できたんだ。


「すげえええええ! 最後のあの動きなんだよ!」
「どんな動体視力してんだ!」
「ハル選手最高‼」

会場の熱気と賛辞の声に包まれ、私の脳内がビリビリとした快感に包まれる。
勝負に勝つと、こんな感覚なんだ……!

メイン画面のモニタにも、配信視聴者からのコメントが流れてくる。

『最初は疑ってたけど本物だったな』
『まぁ、俺は最初からわかってたけどね』
『本当に強い。ヤマトの言った通りだった』
『いい試合を見せてくれてありがとう。私、これからはハルさんのことも応援したい』
『ハル選手の時代が始まる……!』

ヤマトとのオフ会で色々あったけど、私のゲームに対する思いが認められたようで、安心した。

そして、ヤマトが信じてくれた私でいられたことにも。

観客席のヤマトを見ると、まだ手を叩いて喜んでいる。
興奮のあまりかソウマさんの背中を叩いて、ソウマさんが痛がっていた。

――もう、何してるんだろう。

思わず笑みがこぼれる。

ツバキさんの方を見ると、放心状態なのかコントローラーを握ったまま固まっていた。
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