eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
side:ソウマ
午後からヤマトの事務所との打ち合わせがあった。
動画にするコラボ企画で、e-JapanとStarToulの真剣勝負という内容。
もちろんアタックウォリアーズもするのだが、他にもパズルやシューティング、音ゲーなど、普段自分達がプレイしていないゲームもやらされるらしい。
まぁ、真剣勝負と言いながらもお祭りのようなものだ。
この前の青龍杯からeスポーツ界隈はさらに盛り上がりを見せている。
「女性でも活躍できる競技」「いずれはオリンピックも」なんて言葉がメディアから出るほどだ。
この波があるうちに、大手事務所2社でコラボしようって算段。
e-Japanからはヤマトはもちろん、見た目もいい選手達が代表としてくる。
StarToulは言わずもがな。
もともと顔面接があるって言われるくらいの事務所だから……ね。
事務所の代表に連れ添って、僕とヤマトも打ち合わせに出席した。
プレイするゲームのタイトルと、収録する動画の本数を決める簡単なものだった。
ライバル事務所と言えど仲がいいのは助かる。
打ち合わせが終わったあと、僕とヤマトは夕飯を一緒に食べることにした。
最近、仕事が忙しかったので、プライベートで誰かと食事をするのも久しぶりのことだった。
「ヤマト、何食べたい?」
「かつ丼」
「わかる」
男同士のそっけない会話。
意外とこういうのが気楽で好きだ。
普段、配信で無理やり笑顔を作ることもあるし、迷惑行為をするファンにも精一杯愛想をふらなきゃいけないこともある。
ヤマトは、僕にとって唯一年が近くて、お互いの環境を理解しあえる人だった。
友人であり、仕事仲間であり、ライバル。
適当に入った店で食事を追え、ひと段落ついたところで、ヤマトが神妙そうな顔をして話し始めた。
「あのさ、ちょっと報告があるんだけど」
「なに、かしこまって。うちの事務所に移籍したいとか?」
「茶化すなよ。あのさ、ハル……と付き合うことになった」
……マジで? あれだけ女に拒否意識があったヤマトが?
ヤマトの家庭事情のことは、本人から聞いてる。
だからこそ、ハルちゃんと仲良くなれたらいいなとは思っていた。
だけど、実際にふたりが付き合ったという報告を聞くと、嬉しいと同時に少しだけ寂しいと感じてしまった。
いや……「とられた」という感情に近いかもしれない。
ヤマトをハルちゃんに。
ハルちゃんを、ヤマトに。
ヤマトもそうだけど、ハルちゃんも僕を特別扱いしない、友人だった。
ハルちゃんのまっすぐで純粋な目を思い出すと、チクリと胸にトゲが刺さる。
自分が思っている以上に、大きな存在だったのかもしれない。
「……マジか! ヤマト、やったな‼ おめでとう!」
ヤマトの肩を抱くと、ヤマトは恥ずかしそうにして額を掻いた。
「いや、まさか付き合えると思ってなかったんだけどさ。なんかうまく言えないけど、春菜ってすごく特別な存在で……」
「おい、さっそく惚気か?」
「そういうつもりじゃないって!」
……まぁ、僕がハルちゃんをいくら想おうと、恋愛に関しては厳しかっただろう。
なにより、StarToulは女性関係のスキャンダルはNG。
高校卒業後も事務所で活動していく俺は、表立って女性と交際できない。
そんな不憫な思いを、好きな子にさせたくないからね。
「あーあ、僕もe-Japanに入れば良かったな」
ふと、そんな言葉が出てしまった。
「珍しいこと言うな。どうして?」
「いや、冗談だよ。最近ダンス練習がしんどいから、ちょっとした愚痴」
「ソウマはすごいよ。俺には絶対できない」
StarToulでしかできない活動があるから、僕は今の事務所に入った。
ゲームのプレイだけでなく、色々な方向からゲームの世界を盛り上げたいという目標がある。
そのためには、e-Japanではだめなんだ。
この切ない気持ちは胸の奥にしまって、もう二度と出すことはないだろう。
今はただ、大切な友達のこれからを祝おう。
「よし、ケーキでも食おう!」
「俺、ケーキ食べないっつの」
ハルちゃんと付き合うことをきっかけに、ヤマトの女性への苦手意識も少しずつ薄れていってくれるだろう。
ふたりは、これからもっと活躍していくはずだ。
僕も、もっとスピードを上げていかないと。
動画にするコラボ企画で、e-JapanとStarToulの真剣勝負という内容。
もちろんアタックウォリアーズもするのだが、他にもパズルやシューティング、音ゲーなど、普段自分達がプレイしていないゲームもやらされるらしい。
まぁ、真剣勝負と言いながらもお祭りのようなものだ。
この前の青龍杯からeスポーツ界隈はさらに盛り上がりを見せている。
「女性でも活躍できる競技」「いずれはオリンピックも」なんて言葉がメディアから出るほどだ。
この波があるうちに、大手事務所2社でコラボしようって算段。
e-Japanからはヤマトはもちろん、見た目もいい選手達が代表としてくる。
StarToulは言わずもがな。
もともと顔面接があるって言われるくらいの事務所だから……ね。
事務所の代表に連れ添って、僕とヤマトも打ち合わせに出席した。
プレイするゲームのタイトルと、収録する動画の本数を決める簡単なものだった。
ライバル事務所と言えど仲がいいのは助かる。
打ち合わせが終わったあと、僕とヤマトは夕飯を一緒に食べることにした。
最近、仕事が忙しかったので、プライベートで誰かと食事をするのも久しぶりのことだった。
「ヤマト、何食べたい?」
「かつ丼」
「わかる」
男同士のそっけない会話。
意外とこういうのが気楽で好きだ。
普段、配信で無理やり笑顔を作ることもあるし、迷惑行為をするファンにも精一杯愛想をふらなきゃいけないこともある。
ヤマトは、僕にとって唯一年が近くて、お互いの環境を理解しあえる人だった。
友人であり、仕事仲間であり、ライバル。
適当に入った店で食事を追え、ひと段落ついたところで、ヤマトが神妙そうな顔をして話し始めた。
「あのさ、ちょっと報告があるんだけど」
「なに、かしこまって。うちの事務所に移籍したいとか?」
「茶化すなよ。あのさ、ハル……と付き合うことになった」
……マジで? あれだけ女に拒否意識があったヤマトが?
ヤマトの家庭事情のことは、本人から聞いてる。
だからこそ、ハルちゃんと仲良くなれたらいいなとは思っていた。
だけど、実際にふたりが付き合ったという報告を聞くと、嬉しいと同時に少しだけ寂しいと感じてしまった。
いや……「とられた」という感情に近いかもしれない。
ヤマトをハルちゃんに。
ハルちゃんを、ヤマトに。
ヤマトもそうだけど、ハルちゃんも僕を特別扱いしない、友人だった。
ハルちゃんのまっすぐで純粋な目を思い出すと、チクリと胸にトゲが刺さる。
自分が思っている以上に、大きな存在だったのかもしれない。
「……マジか! ヤマト、やったな‼ おめでとう!」
ヤマトの肩を抱くと、ヤマトは恥ずかしそうにして額を掻いた。
「いや、まさか付き合えると思ってなかったんだけどさ。なんかうまく言えないけど、春菜ってすごく特別な存在で……」
「おい、さっそく惚気か?」
「そういうつもりじゃないって!」
……まぁ、僕がハルちゃんをいくら想おうと、恋愛に関しては厳しかっただろう。
なにより、StarToulは女性関係のスキャンダルはNG。
高校卒業後も事務所で活動していく俺は、表立って女性と交際できない。
そんな不憫な思いを、好きな子にさせたくないからね。
「あーあ、僕もe-Japanに入れば良かったな」
ふと、そんな言葉が出てしまった。
「珍しいこと言うな。どうして?」
「いや、冗談だよ。最近ダンス練習がしんどいから、ちょっとした愚痴」
「ソウマはすごいよ。俺には絶対できない」
StarToulでしかできない活動があるから、僕は今の事務所に入った。
ゲームのプレイだけでなく、色々な方向からゲームの世界を盛り上げたいという目標がある。
そのためには、e-Japanではだめなんだ。
この切ない気持ちは胸の奥にしまって、もう二度と出すことはないだろう。
今はただ、大切な友達のこれからを祝おう。
「よし、ケーキでも食おう!」
「俺、ケーキ食べないっつの」
ハルちゃんと付き合うことをきっかけに、ヤマトの女性への苦手意識も少しずつ薄れていってくれるだろう。
ふたりは、これからもっと活躍していくはずだ。
僕も、もっとスピードを上げていかないと。