「でしたら、高校卒業後は大学に行った方がよろしくてよ。この界隈、海外で活躍する選手も珍しくない。少なくとも英語は喋れたほうがいいでしょう」

「え、英語ですかぁ? 私、あんまり得意じゃないんです」

「春菜さんなら、ゲームの言語表記を英語にするだけでけっこう覚えられそうですけどね」

「あ、たしかにそれなら勉強が楽しくなりそう」

……まぁ、実際春菜さんが英語をマスターできなくても、わたくしが翻訳をするから大丈夫ですけどね。

「好きを仕事にするためにも、色々な努力が必要ですね」

春菜さんが腕を組んで唸っている。

「そうですわね。まぁ、わたくしは英語ができますから、一緒にいるときはサポートしますわよ」


「さ、さすがツバキさん……!」

「家では英語で喋るように教育されてきましたから」

春菜さんが尊敬のまなざしでこちらを見ている。
ふふ、悪くないですわ。

「ねぇ、春菜さん」

わたくしはダージリンを飲んで、ゆっくりと提案をする。

「もし事務所が決まらない、まだ入るのをためらう……ということでしたら、わたくしたちでチームを立ち上げませんこと?」

「チーム?」

「そう、いずれは事務所として立ち上げることも視野に入れていますけどね。わたくし、考えましたの。やっぱりeスポーツにおいて女性選手の活躍の場は少ない。それは選手の育成においても言えることだと思います。その部分に重点を置いた事務所があってもいいのではないでしょうか」

「女性選手の……事務所?」

「そうです。西園寺家にはすでに新事業として提案をしており、スポンサーとして許可もいただいています」

「ツバキさんってまだ大学生なのに、事務所を開くことまで考えるんですか⁉」

どうせ事務所を立ち上げるなら、信頼できるパートナーと立ち上げたい。

「ええ。西園寺家はそういうものなんですの。もちろん、これはあくまでも選択肢のひとつです。ほかの事務所で勉強してから移籍してくれてもかまわないですわ」

わたくしたちは、まだまだ若い。
できれば、春菜さんとともに色々なことを学んでいきたいものです。


「いつまでも待っていますので」


わたくしはそう伝えて、アップルパイの最後の一口をいただきました。