eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
第9話:葛藤
「それにしても、すごいわね……」
お母さんは頬杖をついて、悩まし気にしていた。
リビングの机のうえには、大量の会社パンフレットや名刺、書類が置かれている。
「これが全部春菜へのスカウトなんだから、未だに信じられないわよ」
「安心して。本人もまだ信じられてない」
思わず苦笑いをする。
ゲームに関わる仕事をする。というのは決めたんだけど……プロ選手としてなのか、配信を軸に置くのかでは選ぶ事務所は変わってくる。まだ答えは出ていない。
お母さんはいつの間にか買った本をペラペラとめくる。『プロゲーマーになるための本』『世界と日本のeスポーツ』『子どもが芸能界に入ったときにはこれを読め』……すごいタイトルの本だけど、お母さんが真剣にそれを読んではパンフレットを見ているので、何とも言えない。
少なくとも芸能界ではないんだけど。
「春菜、とりあえずコラボ? のお仕事は別に事務所に入ってなくてもできるんでしょ?」
「え⁉ ああ、うん。そうみたい」
「それなら、高校にいる間は事務所に入らずお仕事や活動をしてみたら? そこで相性のいい事務所が見つかるかもしれないし」
確かに、別に急いで入らなくていい。ツバキさんとの話もあるし、卒業を目途に決めるのもいいかもしれない。
「お母さん頭いいね! そうしよっかな。実はね、昨日ツバキさんに『事務所を立ち上げるからそこに来ない?』って誘われてたの」
「……ツバキさんって西園寺財閥の?」
「うん」
「そこにしなさい。もしゲーマーとして活動できなくても、どこにでも就職させてもらえそうだし」
「ちょ、なんでそうなるのよ!」
お母さんの掌返しに、つい笑ってしまう。
「娘が大企業と繋がって働けるなら、それをすすめるのが親の心ってものよ! まぁ、助言はするけど決めるのは春菜だからね」
「……ありがとう」
青龍杯で優勝してから、お母さんやお父さんの存在が前より大きく感じるようになった。
困ったとき、わからないとき、一緒に考えてくれる家族の存在は本当にありがたい。
「そう言えば、ヤマトくんとはどうなの?」
「え、特に何も変わらないけど……」
「動画で有名な人達同士が付き合ったりするとね『ご報告』っていう動画を出すのが普通らしいわよ?」
「それは本当の配信者とかクリエイターだけだよ! ヤマトはプロゲーマーとしての活動に重点を置いてる選手だし、私は一般人だから特に宣言する必要はないみたい。隠す必要もないけどね」
「ふーん。まぁ、幸せならそれでいいわ。に、しても春菜があんなイケメンとねぇ。お父さんは怒ってたけど」
「うそ⁉」
「そりゃあ可愛い娘に彼氏ができたら怒るでしょうよ」
「あんな無口なのに、何考えてるかわかったもんじゃないね……」
そんなことを話していると、スマホの着信音が鳴った。
「はい、もしもし」
電話をかけてきたのは、青龍杯の運営委員会だった。
お母さんは頬杖をついて、悩まし気にしていた。
リビングの机のうえには、大量の会社パンフレットや名刺、書類が置かれている。
「これが全部春菜へのスカウトなんだから、未だに信じられないわよ」
「安心して。本人もまだ信じられてない」
思わず苦笑いをする。
ゲームに関わる仕事をする。というのは決めたんだけど……プロ選手としてなのか、配信を軸に置くのかでは選ぶ事務所は変わってくる。まだ答えは出ていない。
お母さんはいつの間にか買った本をペラペラとめくる。『プロゲーマーになるための本』『世界と日本のeスポーツ』『子どもが芸能界に入ったときにはこれを読め』……すごいタイトルの本だけど、お母さんが真剣にそれを読んではパンフレットを見ているので、何とも言えない。
少なくとも芸能界ではないんだけど。
「春菜、とりあえずコラボ? のお仕事は別に事務所に入ってなくてもできるんでしょ?」
「え⁉ ああ、うん。そうみたい」
「それなら、高校にいる間は事務所に入らずお仕事や活動をしてみたら? そこで相性のいい事務所が見つかるかもしれないし」
確かに、別に急いで入らなくていい。ツバキさんとの話もあるし、卒業を目途に決めるのもいいかもしれない。
「お母さん頭いいね! そうしよっかな。実はね、昨日ツバキさんに『事務所を立ち上げるからそこに来ない?』って誘われてたの」
「……ツバキさんって西園寺財閥の?」
「うん」
「そこにしなさい。もしゲーマーとして活動できなくても、どこにでも就職させてもらえそうだし」
「ちょ、なんでそうなるのよ!」
お母さんの掌返しに、つい笑ってしまう。
「娘が大企業と繋がって働けるなら、それをすすめるのが親の心ってものよ! まぁ、助言はするけど決めるのは春菜だからね」
「……ありがとう」
青龍杯で優勝してから、お母さんやお父さんの存在が前より大きく感じるようになった。
困ったとき、わからないとき、一緒に考えてくれる家族の存在は本当にありがたい。
「そう言えば、ヤマトくんとはどうなの?」
「え、特に何も変わらないけど……」
「動画で有名な人達同士が付き合ったりするとね『ご報告』っていう動画を出すのが普通らしいわよ?」
「それは本当の配信者とかクリエイターだけだよ! ヤマトはプロゲーマーとしての活動に重点を置いてる選手だし、私は一般人だから特に宣言する必要はないみたい。隠す必要もないけどね」
「ふーん。まぁ、幸せならそれでいいわ。に、しても春菜があんなイケメンとねぇ。お父さんは怒ってたけど」
「うそ⁉」
「そりゃあ可愛い娘に彼氏ができたら怒るでしょうよ」
「あんな無口なのに、何考えてるかわかったもんじゃないね……」
そんなことを話していると、スマホの着信音が鳴った。
「はい、もしもし」
電話をかけてきたのは、青龍杯の運営委員会だった。