6月の雪 ―Special Snowflake―

 あの時、蒼生くんに脅迫されてSSFのメンバーにさせられた時、彼女のふりをしてほしいと頼まれた。

 蒼生くんが誰か芸能人に似ているとか、そんなふうではなく、なんとなく一見恐く見えそうな……女子は悪そうな感じのする男子をカッコイイと思うものらしく、クールな蒼生くんの態度が女子たちの行動に拍車をかけているようだった。

 こうやって女子生徒に囲まれたり、後をつけられたりしたら、SSFの活動も出来ない。そう思った蒼生くんは、自分に彼女が出来ればこの騒ぎも収まるんじゃないかと考えた。
 確かに多少の効き目はあったみたいで、蒼生くんを追いかけてくる女子も一時は少なくなったように見えたけど、今は元に戻ってしまったようにも思えた。

「どんなに無視しても、きつく当たっても、ぜんぜん効き目がない。女ってなんでそんなアグレッシブなんだ!? もっと、新菜と一緒にいる時間を増やさないと駄目みたいだな」

「ちょっ……」

 蒼生くんはそう言うと私のことをぐいっと引き寄せた。

「ちょっと! こんなところでそんなことしても意味ないでしょうー!?」

 私が慌てて蒼生くんを引き離すと、みんなから笑いが起こった。

 私が蒼生くんの偽物の彼女ということは、メンバーのみんなには話してあった。彼女がメンバーの1人なんて、そう思ったらやりにくいと思ったから。でも、そこらへんはさすがで、誰一人文句を言うことも、SSFを辞めたいなんて言う人もいなかった。
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