6月の雪 ―Special Snowflake―

*ノイズ


「今日、帰り遅くなるから」

「……」

 最近の朝は、この言葉から始まる。

 毎朝の情報番組の音が消されるような、一瞬の無音。

 いつも気になっていた、何かの拍子に起こる、私の世界が無音になる感覚。

「新菜、聞いてるの?」

 ママの声でその無音から、いつもの世界に戻された。

「……いつも遅いんだから、いまさら言わないでよ」

「……」

 私の言葉にイラ立ったのか、大きな音をたてるようにママはドアを閉めて出て行った。

 こうやってすぐ怒りを表すのも、ホント大人げないっていうか、いつまでもお嬢様気質が抜けないっていうか、こんなんじゃパパだって嫌気がさして出て行っちゃうのも分かる気がする。

 ワガママに育ったママは、自分が気に入らないことがあるとすぐ何かに当たる。それはパパがいなくなってからは、いつも私が被害者で……。

 ホント、朝から気分が悪い。
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