一夜限りのはずだったのに実は愛されてました

私は毎日朝早く出勤し、みんなのデスクの掃除やグリーンへの水やり、コーヒーのドリップをすることがルーティンワーク。
仕事を始めて2年経つが、我が社は社長率いるエンジニアの精鋭がたくさんおり、私はそちらに関しては何も出来ず、むしろ疎いくらいだ。
全員で10人ばかりの少人数。その中で事務として雇われているのは私だけ。
私は自分にできることを最大限努力するしかない。みんながいかに働きやすくなるように動くことこそが私の仕事。
事務といっても仕事は多岐に渡る。
電話やコピーはもちろん、契約書類の作成、データ収集、経理のようなこともしている。
つまり、いわれたことはなんでもこなす何でも屋。

「紗夜ちゃん、昨日ここに貼っておいた付箋知らない?型番書いてあったんだけど」

「あ、それなら机の下に落ちていて大切そうだったのでクリアファイルに入れて机の上に置きました」

「うそ!助かった〜。ありがとう」

こうして頼ってくれることも私にとってはここでの存在意義のように感じ嬉しくなる。
私はみんなみたいにお金を生み出すような存在ではないし、なんの技量もない。
ただ、みんなが仕事をしやすいと思うことこそが私にとってのやりがいだと思っている。

もちろん情けなく思うこともたくさんある。
でもそれは私の能力のなさが問題なのであって仕方のないことだから後ろ向きに考えないようにしている。
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