一夜限りのはずだったのに実は愛されてました

緊張

「みんな、集まってくれ！」

拓巳さんは始業時間になるなりみんなに自分のデスクへ集まるよう声をかけた。

私もその声を聞き、ドキドキしながらいつものように後方に控え集合した。

「えっと、俺からみんなに報告がある。近々神宮寺紗夜と結婚することになった」

それだけ言うとみんなからは驚きの声が上がった。
一斉にみんなの視線が私に集まる。

「まだ続きがあるんだ。それで、今年中に俺たちの子供が生まれる。紗夜は妊娠していて今つわりで体調が悪いんだ。だからみんなに迷惑をかけるがフォローしてもらえると助かる。よろしく頼む」

拓巳さんが頭を下げるのを見て、私も慌てて頭を下げた。

みんなからはますます驚きの声が上がっていた。

「おめでとうございます」

みんながそう声をかけてくれてホッとした。
真子ちゃんも可奈ちゃんもすぐに駆け寄り、私に声をかけてくれる。

「なんで早く言ってくれないのよー！つわりで辛いなら言ってよ。遠慮しちゃダメだからね」

「ありがとう」

私は改めてみんなに頭を下げた。

「ファービス初の結婚だな。めでたい！」

みんなが口々にお祝いの声をかけてくれ、温かい反応に私は涙が流れてきてしまった。
昨日まで本当に不安だった。
でもみんなからお祝いの言葉をかけられ嬉しくて自然と涙が出てしまった。

「松下さん。奥さん泣いてますよ」

みんなにひやかされ、拓巳さんは私のそばにやってくるとハンカチを差し出し、片手で抱き寄せてくれた。
それを見て口々に囃し立てる声が聞こえてきた。

「ま、みんなこれからもよろしく頼む」

改めて2人で頭を下げると拍手された。
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