「なんか、快適すぎて怖い」

 ふかふかソファのすみっこに腰を下ろしたまま、結子が不満のようでいて不満ではない独り言をぽつりと呟く。

 その声を聞いて隣……といってもかなり距離の開いた反対端に座っていた奏一が、仕事用のダブレット端末からゆっくり顔を上げた。

 そしてブルーライトをカットするための、度数が入っていないレンズの向こうから結子の顔をじっと見つめる。

「引っ越しの手配もしてくれたし、お部屋は広くて立地もいいし、マンションと職場もほんとにメトロで一本だし」
「だからそう言ったでしょ」
「おまけに家の周りに飲食店もいっぱいあるし、家事もほとんどしなくていいし……!」

 突然始まった奏一との生活は驚くほどに快適だった。家事のほとんどはハウスキーピングとランドリーサービスとケータリングで賄っている。

 だから結子の今日の担当家事は、おかずを乗せたお皿を洗うことだけ。その分の家事を奏一が負担しているのかといえばそういう訳でもなく、彼の今日の担当家事は二人が入浴し終わったお風呂の掃除のみ。

 夫婦共働きということで、家事も半分ずつ。けれどやることは極端に少ない。その状況は大急ぎで入籍の手続きを済ませ、目まぐるしい速度で準備を進め、ほぼ勢い任せでここに引っ越してきた一カ月前からずっと同じ。