だから再度、自分の希望を口にする。奏一が結子を欲してくれるように、結子ももう奏一以外の人を選ばない。だから、約束してくれないの? とちょっとだけむくれて見せる。

「もう一回、ちゃんとプロポーズしてくれるんでしょ?」

 結子の言葉に、奏一がふっと笑顔になる。そして小箱の中のベルベットの台座から指輪を取ってして、結子の左手を握ってくれる。プラチナの指輪を結子の薬指に滑り込ませて、そのまま手の甲に唇を寄せる。

「結子さん。俺はあなたを愛しています。かっこ悪いところも、情けないところも見せるかもしれないけど……でも俺と結婚して、一生傍にいて下さい」
「――はい」

 奏一の一途な告白を聞き届けた結子は、無意識のうちに顎を引いていた。迷いはなかった。

 きっとそれが結子の一番欲しかった言葉だ。結子が欲しかったのは、入谷の名前でも、入谷の財産でもない。一方的な愛情や遠慮の態度でもない。

 たった一つ欲しかったものは、お互いを信頼し合い、想い合い、対等な立場で支え合って生涯を共に歩んでいける約束だった。

 奏一はその約束をしてくれた。結子だけを一生愛し抜くと誓ってくれた。

「よろしくお願いします」

 結子が奏一に笑顔を返すと、彼もすぐに頷いてくれた。

 だがしばらくすると奏一が耳まで顔を真っ赤にしてテーブルの上に突っ伏し『結子が可愛くて困る……』と情けない声で呟く。

 その姿を見た結子は『この人、結構からかい甲斐がある人だな』なんてつい失礼なことを考えてしまうのだった。