独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 そうして奏一と響一は、それぞれイリヤホテル東京エメラルドガーデンとルビーグレイスの総支配人に就任した。

 若い彼らの働きにはイリヤホテルグループの経営陣だけではなく、業界全体が注目していた。結子もブライダルドレスメーカーの社長である父から二人の話はたびたび聞かされていたが、それらはどれも賞賛の声だった。

 イリヤホテルグループ内のホテルは上からクラウン・ティアラ・コロネットと呼ばれる独自の格付けが成されている。去年の春先に奏一の経営するエメラルドガーデンと響一の経営するルビーグレイスが揃ってコロネットランクからティアラランクに格上げしたと聞いたときは、結子も相当驚いた。

 独自の格付けとはいえ、イリヤホテルグループの評価基準と判定はかなり厳しい。それをクリアして今年の査定でもティアラランクを保持しているだけで十分すごいと思うのに。

「え、二人が総支配人に就いてから、今まで一回も業績負けたことなかったの?」
「うん」

 ――まさかさらに細かい数字を比較しても、一度も響一に負けたことがなかったとは。

「ほんと、怖いぐらいに負け知らずな人生なのね」

 結子はただただ感嘆するしかない。しかもそれが、奏一本人の努力や意識によるものではないというのだから、驚きすぎて逆に呆れてしまう。

 その話を聞くと、奏一が運気だの運勢だのジンクスだのと口にする理由も少しだけわかる気がする。彼はそういう運気や流れを掴む感覚やそれを活かす能力がずば抜けて高いのだろう。

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