恋のチャンスは3日間

2人で映画を選んで、見ることにした。
これも森下の好みを知るための提案。

俺はコメディ。森下は恋愛を選ぶと思ってたけど、アクションか!すげえ意外。
弟と一緒に映画とか。
仲の良い姉弟で羨ましいね。
俺には兄貴がいるけど、ほとんど連絡とってないからな。

2本連続で見終わるとさすがに疲れた。

音楽を聞きながらしばしの休憩。
酒を飲んでいろんな話をした。
途中から映画の話ばかりになってたけど。

最後の1本見るときに、ソファーからベッドの形にする。

「観てる間に寝ちゃうかもだから」

これってさ、ベッドで2人で座って映画みるってことだろ?
さすがに森下もちょっとは俺を意識するんじゃ・・・なんて期待したけど・・・。

「それこそがソファーベッドの醍醐味なのです!観ながら寝ても大丈夫で、私もそこが気に入っているんです!」

と力説された。

もう、ここまで意識されないと、笑うしかねーわ。

最後の1本は、ホラー。
これ、去年やって観たかったけど時間がなくて保留にしてたやつ。
森下も、ミステリー観るって言ってたし大丈夫だろ。

「これでいい?」

一応確認。

「あ、はい」

と返事をくれたので、映画を再生した。

最初は穏やかな感じから始まって、徐々に怖くなっていく。
結構な怖さだな。これ。

映画が後半に差し掛かったとき、森下の様子が変なことに気がついた。

映画が面白くて画面から目を逸らさないのかと思っていたが・・・なんか違う?

「森下?」

声を掛けると、ゆっくり俺の方をみる。
涙目で、膝の上で手をぎゅっと握りしめていた。

あ、これだめなやつだ。

「あ、もしかして、ホラーダメだった?」

森下がゆっくりと頷くと涙がポタリと落ちた。

ああ、やべぇ。

「ご、ごめん」

謝ると、声も出せないのか首を横にだけ振る。

・・・失敗した。
ちゃんと確認すればよかった。

そう思ってる間も映画は流れていて、突然の大きな音に森下の体がビクッと反応する。

その姿をみた瞬間、体が勝手に動いて森下を抱き締めていた。

慌てて映画をやめて音楽に切り替えた。

抱き締めた腕を振り払われないことにまずは安堵して。

「ごめん、ごめんな。ちゃんと確かめれば良かったな」

腕のなかで小さく首を振る。

「い、言わなかった私も悪いので・・・ごめんなさい」

なんで森下が謝るんだよ。

震えながらしがみついてくる森下が本当に愛しくて、俺は柔らかく温かい感触を離せないでいた。
背中を優しくなでる。
女を抱き締めたのは初めてではないが、こんなに離したくないって思ったのは初めてだ。

しばらくすると、森下の体が急に重くなる。
あれ?力が抜けた?

「ん?・・・森下?」

え?寝てる?
なんで?
ちょ、なんで寝るかな。

「まじか・・・」

しょーがねーなー、もう・・・。

そのままゆっくり、横に寝かせる。

「・・・俺は男として全く意識されてないのか?」

安心しきって寝ている森下を見て、

「はあー。」

とため息一つ。

そのまま寝顔を見ながら

「・・・・・可愛いやつ」

呟いて、森下のおでこにチューっとして。
少し眺めた後、毛布を掛けて、俺は映画の続きを音を小さくして観たのだった。
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