恋のチャンスは3日間
映画が終わって、少ししたら森下が目を覚ました。
寝てしまった自分にショックを受けているようだったから、ちょっとからかって。

その後は、もう1本映画を2人で観て、眠りにつく時、森下が違う部屋に入って行きそうなのを止めた。

「森下、どこ行くの?」

不思議そうな顔で俺をみる。

「え、部屋に行って寝ますけど・・・」

「いや、森下は今日はこっちで」

俺は笑顔でベッドをぽんぽんした。

まあ、驚くよな。
反応はわかってた。

「え?・・・ええ?いや、あの・・・それはちょっと」

はは。可愛い。

「今日、俺がなんで森下のところに泊まることにしたのか、その理由がこれ」

ひたすら笑顔でぽんぽんする。
笑顔とは裏腹に説得するのに必死だ。

「泊まる理由?」

「うん。俺ここ最近眠れなかったんだよ。仕事忙しいってのもあるけど、眠ると変な夢見て目が覚めて眠れなくなる日が続いてて」

これは本当で。
俺の中で相当キツい状態になってた。

「で、昨日の夜はなぜかゆっくり眠れたわけ。朝起きてその眠ることができたのは、森下のおかげだったって気がついた」

久しぶりにゆっくり眠ることができたんだ。

「で、今日もう一回試したいんだけど・・・だめ?」

だめって言われたら、俺泣く。
一人で毛布かぶって泣くわ。

「えっと・・・」

困ってる顔。
こんな表情させたい訳じゃないけど。
頼む。森下、お願い。

「なにもしない。約束する」

「・・・・わかりました」

あああああ、よかった。

「じゃあ、こっち」

嬉しくて、めっちゃ笑顔な俺と、顔がかなりひきつりながら近づく森下。

「そんな、緊張しないでよ」

俺まで緊張写る。
それじゃなくても、ドキドキしっぱなしなのに。

「しますよ!」

すこし大きな声の森下に、茶化してる訳じゃないんだけどな。

「ああ、そうだよな。ごめん。でも俺も緊張はしてる」

しない方がおかしいだろ、こんな状況。

「え、そうなんですか?」

「そりゃそうだろ。・・・お前俺をなんだと思ってんだ?」

そんなに軽く言ってるように見える?

「いえ、な、なれてるのかなーって・・・おも・・・て」

なれてる・・・ね。
まあ、彼女は結構変わってたから、そんな風に思われても仕方ねーのかなって思うけど・・・でもさ、さすがに好きな女にそう思われてたって聞かされたら、

「はー。傷つくわ」

首ががくりと落ちる。

「え・・・あ・・・」

「言っとくけど、こんなこと頼んだの森下がはじめてだからな。・・・なんだよ、俺が誰とでも寝るとか思われてたなんて。がっかりだよ」

半分八つ当たりだ。
意識もされず、軽い男と思われて、悲しいったらないよ。

プイッ。と反対方向を向いて寝る俺。
子供かっ。

一緒に寝てくれってお願いしておいて怒るとか・・・バカじゃね?俺。

「ぐ、郡司さん。・・・・ごめ・・・なさい」

ぐすっ。
鼻をすする音がして、
えっ?
なんで涙声?

慌てて起き上がって森下をみると

泣いてるし!
泣かせてるし!!
誰だ泣かせてんの!!!

俺か!!!!

「ごめん」

泣いてる森下を抱き締める。

なにやってんだよ。

「ちょっとからかうつもりだっただけなの
に。・・・今日は泣かせてばっかだな。ごめんな」

郡司さん怒ってる?って聞かれたら、怒ってません。にこーって振り向くつもりだったのに。
泣かせちゃうとか。
ほんと最悪。

「ううっ」

頭を優しく撫でる。
こうなったらもう、しょうがない。
このまま寝よう。

「きゃっ」

急に横にごろんと寝転んだから森下がビックリした声を上げる。

「今日はこのまま寝ようぜ」

抱き締めたまま毛布を掛ける。

小さな明かりに切り替えた時に森下の顔をみると、涙が止まっていた。

「あ、泣き止んだ」

よかった。

俺の胸に顔を押し当てて、目を閉じる森下を
包み込むように抱き締めて、2人ともなにも言わずに眠りについた。
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