捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
樵《きこり》のおじいさんと妖精

「これこれ二人とも、そんなに騒いでいては、聖女様が起きてしまうではないか」

「だってぇ、追放された聖女様なんて滅多にお目にかかれないんですもの~」

「そうですよね~。僕も気になって気になって」

「困った奴らじゃのう」

 微睡んでいるとなにやら騒がしい声が聞こえてきて、目を開けると、そこには見知らぬおじいさんがいた。

 その傍らには、おとぎ話に出てくる妖精のような生き物が二人いるようだ。

 一人は、着せ替え人形くらいの大きさの綺麗な女性の姿をしている。

 そして驚くことに宙に浮いているようだ。

 夢か幻覚かと思い、目を凝らしてよくよく見れば、背中には、昆虫の羽のようなものが生えているように見える。

 もう一人は、小さな幼稚園児くらいの背丈の男の子? というよりは、風体からして男の人のようだ。

 ーー確かに、異世界に召喚されたようだったけれど、今度は一体何事ですか?

 お世辞にも寝心地がいいとは言えない硬い木製のベッドの上で、起き抜けのせいで状況がまったく理解できずにいる。

 眠気と驚きとで、しょぼつく眠気眼を擦っている私のことを、妖精は物珍しそうにキラキラとした眼を向けたままだ。

 そこに立派な白い髭を生やしたおじいさんの優しい声音が割り込んできた。

「聖女様、こやつらが騒がしゅうして申し訳ございません。ずいぶんと酷い目に遭われたようでしたが、お身体の具合はどうですかな?」

 その声があんまり優しくて、田舎に住んでいた今は亡き母方の祖父のことを思い出し、なんだかホッとする。

 そのせいか覚醒してきた思考を巡らせる。

 ーー確か、お城から追い出されてから行く当てなくとぼとぼと歩いていたんだっけ。

 やがて街の外れで男たち数人に絡まれて、逃げ出したところまでは覚えている。

 この状況からすると、このおじいさんが私のことを助けてくれたのだろう。

 けれども、わからないことだらけだ。

 まずはお礼を言わなければいけないのだろうが、私の口から出たものは質問ばかり。

「……は、はぁ。あのう、私、どうしてここに? それにあなたは?」

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