「あの…やはり、何かお礼をさせてください。欲しいものとか、私ができることありませんか?」


氷室専務は、顎に手を当て、目を閉じて何か考えているようだ。


「そうだ!葉月さん、一つだけお願いがあるんだけど、いいかな?」

「はい。できることなら何でもします。仰ってください。」

「うん。僕は今、この部屋に住んでいるんだ…だいたい快適なのだが、ここに居ると100%外食になってしまうんだ。できれば手作りの食事が食べたいな…お願いできるかな?」


…よかった。手作りの料理なら私にもできる。


「では、明日の夕食を作って持ってきます。ここに持ってくればよろしいでしょうか?」


すると、氷室専務は嬉しそうに口角を上げ、目が輝いたように見える。


「本当か?ありがたい。ホテルのフロントに言っておくから、勝手に部屋に入ってくれ。」

「…はい。ちなみに…嫌いな物とか、ありますか?」

「特に無い。好き嫌いは、あまり無いほうだ。」

「承知いたしました。それでは明日、何か作って持ってきますね…でも、あんまり期待しないでくださいね。普通の家庭料理ですので。」


氷室専務に、手作りの食事を持ってくると約束をしてしまった。
よく考えてみると、普段はきっと高級料理を食べている人だろう。
普通の一般的な家庭料理で良いのだろうか?
しかし、私が作れるのは、ごく一般的な家庭の料理しかない。

考えてみたら、すごく不安になって来た。氷室専務の口に合うのだろうか。