極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
通り雨に交差した過去と今
 衛士は仕事の都合をつけてはアパートに足を運び、極力私や茉奈に会いに来た。父には改めて結婚の報告と挨拶を済ませたらしく、続けて叔父夫婦のところにもわざわざ頭を下げに足を運んだ。

 敦さんも陽子さんも驚いていたがすぐに衛士と打ち解け、敦さんは今後の杉井電産や業界の行く末について熱く語り、衛士と盛り上がっていた。

 無意識に、ここに父も加わるとどんな話になるんだろうと想像する。

 衛士との結婚を決めた数日後、私は茉奈を連れて父のお見舞いに行った。もちろん自分の口から彼との結婚を報告するためだ。

 それ自体は父も想定内だったのか、とくに大きな反応はなかった。しかし私が父に告げることはこれだけじゃない。ずっと口を閉ざしていた茉奈の父親について話す日がきた。

 相手が衛士だと知ったら父はなんと言うだろうか。もしかすると激怒して、打って変わって結婚を反対するかもしれない。

 抱っこしていた茉奈が下りたがるので、そっと解放し父に向き直る。

「それでね、お父さん……ずっと黙っていた茉奈の父親についてなんだけど」

 おずおずと切り出すと、父の鋭い視線が飛んできそうな気がして思わずうつむいてしまった。

「実は、彼が……朝霧衛士が茉奈の父親なの。二年前、お父さんに内緒で付き合っていて……」

 白状する声が震える。今でこそ会社のためにラグエルを頼る決意をした父だが、当時は敵対視していた。
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