別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
もう好きになってしまったのに、彼の心にあるのは、私への愛じゃなかったなんて残酷だ。


「陸人さん……。好き」


好きだから、あなたを縛りつけたくない。

きっと私がそばにいたら、彼は永遠に罪の意識にさいなまれたまま生きていくのだろう。

もしも医学の進歩のおかげでこの傷が癒えたとしても、彼の心は縛られたまま。

私は陸人さんに、そんな未来を歩ませたくない。
彼には彼の人生があるのだから。


「もう十分だよ……」


私のために外科医になり、結婚まで考えてくれた。

あなたはまだ足りないと思うかもしれないけれど、そもそも謝ってもらう理由がない。

それに……私のいいところをたくさん教えてくれた彼から、自信をもらった。

傷痕のコンプレックスが大きすぎて、自分のいいところなんて思いつきもしなかった私の人生を変えてくれた。

――私はさんざん考えて、ひとつの決断を胸にした。
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