別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
その足で食彩亭に向かい退職を申し出ると、重さんと恵子さんは目を丸くしたが、私の思い詰めた様子を見て理由を聞かずに受け入れてくれた。

最後に弁当やおかずをたくさん持たせてくれて、『いつでも待ってるから帰っておいで』と声をかけてもらったときは、涙をこらえられなかった。


父や母にはなにも告げず、住み慣れた街を去り、電車で一時間ほど離れた隣県の小さな街で新しい生活を始めた。

ところが逃げるように陸人さんの前から消えたあと、お腹に赤ちゃんを宿しているのに気づいたのだ。

陸人さんに知らせるべきか随分迷ったが、ひとりで生んで育てると決め、凛を誕生させた。


凛の存在が私を強くした。

弱音なんてはいている場合じゃない。
この子を一人前にしなければと必死で、陸人さんを想って泣くのもやめた。

父親のいない子にしてしまったのは私。
凛に生まれてきたことを後悔させたくない。

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