別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
違和感の答え
日曜はいよいよ陸人さんの実家に挨拶に向かう。

どんより曇った空にははらはらと雪が舞い始め、緊張で体を硬くしている私をさらにいっそう凍りつかせた。


「心春、傷痛む?」
「ちょっと」


実家へと向かう車の中で、ハンドルを巧みに操る陸人さんが問いかけてくる。

天気が悪いと傷が疼くと話したから心配しているのだ。

けれども今日は、天気のせいというよりは緊張のせいだろう。


「また今度にする?」
「いえ、大丈夫です」


先延ばしにしたって緊張がなくなるわけじゃない。
それに早く結婚を認めてもらい、彼と夫婦になりたい。

自分にこんな積極的な感情があるのに驚いたけれど、こうして前向きになれたのは陸人さんのおかげだ。


彼の実家は、とある高級住宅街の一角にあった。

まるで白亜の城とでも言うべきか、白い壁が美しい洋館は立派すぎて、怖気づくほどだ。

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