嘘と、恋。
そのイケメンホストは、少し、んーと考えると。


あっこ、と、近くのビルの二階を指差した。


「あの店、セクキャバなんだけど。
時給も6千円くらいだったし。
色々バックも入れたら、月に頑張ったら100万くらいなるだろうし。
いいんじゃない?」


「セクキャバ…ですか…」


それは、キャバクラの一種なのかな?


それよりも。


「そのお店は、年齢誤魔化せます?」


そう。重要なのはそれ。


「ん?それは、大丈夫。
もし、電話して面接の時に身分証持って来てって言われても、適当に頷いて。
面接では、身分証忘れたとか適当に言えばいいから」


そう言って、妖艶な笑みを浮かべていて。


話しているだけなのに、妙にドキドキしてしまう。


「そうそう。俺からの紹介だと言えばいいから。
あっこのオーナーとは俺顔見知りだから。
これ、俺の名刺」


サッと、スーツの胸元から取り出した一枚の名刺を、私に向けて来る。


それは、ホストクラブと思われる店の名前と、この人の名前が書かれていて。

やっぱり、この人ホストなんだな。


「菜月さん?」


その名刺に書かれた名前。


ナツキ、と口にした。


「その店の電話番号とか、そこのビルの下にあるパネルとか見たら分かるだろうし。
こっからでも、俺は見えるけど。
早速、電話してみたら?」


そう相変わらずの綺麗な顔で笑顔を向けて来るから、思わず頷いてしまいそうになる。


「でも…。
私…、ちょっとわけあって、スマホ持ってなくて…。
あ、そうか!あのお店の電話番号覚えて、公衆電話から掛ければいいのか」


ボールペンの一つでもあるなら、
メモするのだけど。


「じゃあ、俺のスマホ貸してあげる」


そう言って、菜月さんはスーツのポケットからスマホを取り出して、それを触ると、こちらに手渡して来た。


その時には、それは既に何処かに掛けているのかコール中で。


そして、画面が通話中になった。


菜月さんのスマホから、微かに男性の声が聞こえて来る。

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