離婚しましたが、新しい恋が始まりました
覚えていないのか


食事が終わるとメンバーたちは飲みに行くようだったが、紬希は仕事を理由に帰ろうと決めていた。

「ごめんなさい、明日は朝が早くて」

雰囲気を壊すかなと申し訳なく思ったが、実際、明日は早朝カンファレンスの予定がある。有梨だけは了解済みだったのでバイバイと手を振ってくれた。

桂木が連絡先の交換をしたそうにスマートフォンを手にしていたが、紬希はメンバーに挨拶してから地下鉄の駅に急いだ。ここから自宅マンションまで30分はかかるので、つい急ぎ足になっていた。

(あ、ラテかコーヒー飲みたいな)

お酒ばかりだったから、濃いコーヒーが欲しいところだが自分で淹れるのは面倒だ。

(自動販売機でいいか)

すぐ近くの商店の前に自動販売機があるのを見つけて足を止めた。

(甘いラテ?ブラック?迷うなあ……)


硬貨を手にして自販機の前に立ったまま決めかねていたら、不意に後ろからにゅっと腕が伸びてきた。

「ブラックか?」

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