離婚しましたが、新しい恋が始まりました
過去の出会い


 元夫が恋人に騙されたせいで離婚させられたという真実を聞いても、紬希は何の感情も湧いてこなかった。逆に、その嘘のおかげであの家を出られたことに感謝したいくらいだ。

(もう、終わったこと)

叔父から聞いた思い出したくもない話は心の隅に押しやって、親戚に挨拶しようと紬希があたりを見回していたら玄関のチャイムが鳴った。

「あ、私が行きます」

お盆を持っていた磯田に代わって紬希が出迎えようと玄関へ急いだ。

(まだお見えじゃない方っていらしたかしら?)

「お待たせいたしました」

紬希が玄関のドアを開けると、そこには近頃よく顔を見る人物が立っていた。

「やあ、君か」

堂々とした体躯の光宗磐だ。彼の濃紺のスーツ姿は、いつもの白いドクターコート姿と違って新鮮だった。



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