離婚しましたが、新しい恋が始まりました
新たな動き


 紬希は仕事の帰りに、よく書店に立ち寄る。そこは医療関係の書物が豊富で医療従事者や大学関係者が良く利用する店だ。池袋の駅からも近いので他の買い物も出来る。プラプラと店内を歩きながら、紬希は目当ての書籍を探していた。

(あ、あった)

今日の買い物は、紬希が目指すアドバンス助産師の試験に向けて勉強するための本だ
もう一歩進んだ資格が欲しくて、最近勉強を始めていたのだ。

支払いを済ませて書店から出ようとしたら、声をかけられた。

「有沢さん」
「あ、あなたは……こんばんは。桂木さん」

あの合コン以来の、桂木陸斗だ。

「偶然だね。ここにはよく来るの?」
「ええ、欲しい本がだいたい見つかるので」
「僕もだよ。大学で必要な本を探す時は、ここに来るんだ」
「大学?」

桂木は小学校で教えているときいていたのだが、記憶違いかと紬希は首を傾げる。

「ああ……教員は現場を知るためで、僕は大学で教えるのが本職だから」
「大学で?」

「そう。教員を目指す学生を教えるのが仕事なんだ」
「あ、大学の先生だったんですか?」

「まだ講師だけどね」

桂木の照れくさそうな笑顔は益々幼く見えたが、彼はしっかりと目標を持っているようだ。

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