もう一つの現実を経験できる夢は、誰もが毎晩複数回見るといわれていて、近年、現実との区別が出来ず、頭を悩ませている人も多くいるという。


 「今日、夢見病のニュース見たんだけど」

 「俺も。そう言えば近くの国立病院に患者がいるらしいよ」
 
 「まじか」

 夏休みを翌日に控えた一学期最終日にも関わらず、クラスは昨日のニュースで取り上げられていた夢見病の話で持ち切りだった。

 最近になって、夢見病、という名の病が頻繁に飛び交うようになった。




 夢見病、それは治療法の確立されていない不治の病。

 原因は解明されておらず、時間とともに進行してく病気による死を待つのみだ。
 
 症状には個人差があり千差万別だが、中でも代表的なものは長い眠りにつくことだ。

 数分のものから数十時間におよぶ症状は、前触れなく起こるため、会話の最中や歩行中にも起こる可能性がある。

 よって、転倒のリスクも高く、常に危険と隣り合わせだ。


 そして、特徴的なのは、望んだ夢を見ることができる、ということだ。

 どうやら、その代償に寿命が縮まってしまうらしいが、それでも人気が高いらしい。

 
 人気の理由としては、夢の中で、まるでもうひとつの現実を楽しめるからだという。

 例えば、欲しいもの全てを手に入れたり、人間が持ち合わせていない能力を身に付けたり、と現実ではありえないようなものまで。
 

 さらに、それは、夢の一部始終を鮮明に覚えていることで、一般的な夢とは大きく異なる。

 その夢は夢見病患者のみが体験できるらしく、辛い闘病生活の唯一の救いと言っても過言ではない。


 症状の大半が夢に関連することもあり、この病は夢見病と言われている。


 最新の研究では十万人に一人の確率で発症し、そのうちの大半が若者だという。

 そうは言っても夢見病に関する情報が少ないがゆえ、未だに夢見病だと診断されていない人も多く存在すると言われていて、それも含めるとかなり確率が変わってくるが。



 とはいえ、大抵の人間が夢見病とは無縁の生涯を過ごすのだから、次第にその話題は消えていくだろう。


 そう思った私は、明日から始まる夏休みの課題に手を付けた。
 
 両面印刷の更紙をホッチキス止めしている課題は、決まってやる気が起こらない。

 数枚ならまだしも、ざっと数えただけで三十枚はある。

 果たしてこんなものを解く意味はあるのだろうか、と思いながらも課題さえこなせばある程度の成績は保証されるために黙々と解き進めた。