Life is a flower
ひとすじの光
「僕は自分を責め続けました。初めてあなたのお店に行ったときも、まだ暗闇のなかに居ましたが…花に囲まれて笑顔で働くあなたを見ていたら、束の間でも癒されて。しかも、あなたは初対面の僕に傘を貸してくれた。その結果、自分がずぶ濡れになって、風邪までひいたのに」

「違います!私はそんな純粋な人間ではありません!」

「そりゃあ…僕はあなたの名前すら知りません。私の何が判るんだと言いたくもなるでしょう。でも、僕が店に通い続けたのは、あなたの作る花束が欲しかっただけじゃない、あなたが暗闇のなかにひとすじの光をくれたから…」

何も返す言葉が見つからない…。

でも、この言葉の総てが真実ならば…光をくれたのは、彼のほうだ。

私は少し微笑むと、もう一度彼に背を向けて歩き出した。

「待って!せめて名前だけでも教えてくれませんか?…僕は、大河内理仁といいます!」

後ろからそんな声が聞こえるけれど、今度こそ、その言葉にも振り返らない、歩みも止めない。

リヒトさんっていうんだ…はじめて知った。

今此処で、彼の優しさに甘えてしまえば、きっと私は一生自分を許せない。

涙がまた溢れる。

とても温かな涙が…。

心のなかで、リヒトさんに何度もありがとうと叫びながら、私はただ歩き続けた。
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