“ただの”可愛い彼氏
私(橋本 香奈ーはしもと かなー)は高校の校門から少しはなれた,人の邪魔にならない場所にてある人を待っている。

その時間が好きだから,絶対に彼より早く教室を出るのが日課だ。



「香奈!」


満面の笑みで走ってくる彼。

……訂正。

私が好きなのは彼を待つ時間じゃなくて,こうして彼が走りよってくるのを見る瞬間。

顔が綻ぶ。



「可愛い」



ぼそりと呟く。



「え?」



怒られるから,彼に聞こえないように。

彼は森本 純(もりもと じゅん)なんと私の彼氏である。

付き合って半年。

2人でいろんな場所に行った。

ちょっと犬っぽいと私が密かに思っている純は,優しくてとっても可愛くて大好き。

自慢の彼である。



「? どうしたの? ……もーっまた負けた!! 急いできたのになんでいるの!」



1人自慢気にする私を不思議そうに見た純は,悔しそうな顔で私に怒る。

そんな様子も,やっぱり……

可愛い。

一見年下みたいな反応をする純も,クラスは違えど私と同い年。

純の少なからずあるプライドを尊重するため,私は必死に悶えそうになる身体を抑えた。
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