きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
本当に、全部、
「……これで良いかなあ」

鏡に映る自分を、ジッと見つめる。

細かいラメを含んだ明るめのブラウンのアイシャドウに、目尻より少しだけ長く引いたダークブラウンのアイライン。

そして束感を作るために付けた透明のマスカラが、すっぴんの時より少しだけ目を大きくはっきりとみせている……はず。

「次はリップ……」

1か月前、高校の入学式の2日前にお気に入りの輸入雑貨店で買ったメイクポーチから、2本のリップを取り出す。

グッと大人っぽい印象を与えてくれる濃い赤色のリップと、ナチュラルで血色を良く見せてくれる青みを帯びたピンク色のリップ。

どちらにしようかな。

どちらかというと、最近のお気に入りは赤色のリップ。

けれど今日はー…

「ピンク色にしようっと」

少し前まで咲いていた桜のようなピンク色を唇にのせると、顔が明るく華やかになる。

「あとは髪の毛だけ」

ヘアアイロンのプラグをコンセントに差すついでに、コンセントのそばに置いている時計をちらりと見る。

家を出る時間まで、後三十分。

三十分もあれば十分だ。

鼻歌を歌いながらゆっくりと、いつもより緩く髪の毛を巻く。

仕上げに軽くほんのりとフローラルの香りがするヘアオイルをつけてから制服のジャケットを羽織り、昨日のうちに準備をしておいたカバンを持って部屋を出た。
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