きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
事件
ゴールデンウィーク明けの学校は、普段より賑やかで、落ち着きのない雰囲気が漂っていた。そしてそれは私も決して例外ではなく、鈴ちゃんを初め、仲良しのクラスメイトたちと連休中の話に花を咲かせた。

学校は面倒だし、お休みは嬉しい。
一方で、たった1週間弱のお休みでも、友達と会えないのは寂しい。
結局、連休がある度に、ただ来るだけでたくさんの友達に会える学校は悪くないな、と思ってしまう。

お昼休み、鈴ちゃんの紹介で仲良くなった隣のクラスの友達のところでお弁当を食べ終え、鈴ちゃんと一緒に教室へ戻った時、事件は起きた。

「痛っ……!」

教室に入ろうとしたところ、入り口のドアの前で誰かと勢いよくぶつかった。

「ご、ごめんな」

鈴ちゃんと話すのに夢中で、全く前を見ていなかった。

痛みを受けた額を右手で押さえながらぶつかった相手に謝ろうとした時、冷たい声が私の謝罪の言葉を遮った。

「気持ち悪」

「……えっ?」

今、“気持ち悪い”って言われた?

痛みも忘れて言葉を放った人の顔を見た瞬間、私は一気に自分の顔から血の気が引くのがわかった。

「宮本、くん……」

宮本光希(みやもとこうき)

同じクラスの彼は、入学早々、同じ学年の女子生徒たちから注目を集めた。

180cm以上という高身長に、細身で筋肉質な身体。
切れ長の二重にスッと筋の通った高い鼻、そして薄すぎず分厚過ぎない程よい厚さの唇をもった、クールな印象を与える顔。
それに加え、彼は中学時代、全国に名を馳せたほどの実力を持つバスケットボール選手だったらしく、全国でも”強豪”と言われている私たちの学校のバスケットボール部で、一年生ながら一際目立つ存在らしい。

スタイル良し、顔良し、運動神経良し。

この3つが揃っていながら話題にならない、なんてことはなく、事あるごとに彼はなにかと話題になった。

また、幼少期に関西地方で過ごした影響からなのか、彼の口から飛び出るテンポの良い関西弁が、彼の人気と注目を加速させた。

ただ、これほど”良し”が揃っていながら、どうやら性格は“良し”ではないらしい。
本人は注目を浴びることがあまり好きではなかったのか、仲良くなりたいと願い、頑張って話しかける女子たちに、冷たい言葉を投げかけては傷つけていた。

だから、関わりたくなかったのに。

関わらないように、気を付けていたのに。

「何? やっぱりお前も俺のファンなん?」

気軽に名前呼ぶなや、と彼は盛大な音をたてて舌打ちをする。

その音に、心臓が縮み上がる。
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