きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
彼の気持ち
月曜日。今日から中間試験の一週間前となり、部活は一斉に休止となる。

バスケ部も例外ではなくて、大会の予選期間中ということもあって自主練習で使う人にむけて体育館自体は開放されるものの、”部”としては今日から練習はお休みに入るらしい。

宮本くんはてっきり自主練をするのかと思っていたけれど、高校に入って部活に必死になった結果、夏の三者面談で「いくらバスケが出来ても、このままだと留年する」と担任の先生に言われたようで、

「勉強を教えてください……」

土曜日、プラネタリウムを見た後に夜ご飯を食べている途中、「誕生日だから」という名目でお願いされた私は、すっかり弱った彼の姿に珍しさを覚えつつOKしたのだった。


「日誌提出してくるね」

「うん。教室で待ってるわ」

今日から試験が終わるまでの放課後は、宮本くんの家の近くにある図書館に寄って勉強をする約束をしている。

早く日誌を提出して、勉強しないと。

宮本くん、想像以上にヤバそうだからな。

さっき、試験範囲の英単語を20問ほどテストしてみたけれど、3問しか覚えていなかった。

英語、初日なのになあ……大丈夫かなあ。間に合うかな。


「なあ、高橋と付き合ってんの?」

職員室から戻り、急いでドアをあけようとしたとき、教室の中から自分の名前が聞こえてくる。

私はドアノブに手をかけたまま、反射的にパタリと足を止めた。

「なんで?」

この声……宮本くん、だ。

わかった瞬間、教室の中にいる彼に聞こえるんじゃないかと思うほど、私の心臓は大きな音を立てた。

「土曜日、二人で出かけてなかった? 俺、友達と買い物行ったら、宮本と高橋が一緒に歩いているところ見たんだけど」

「え、まじか。宮本が女子と二人で出かけるとは珍しいな」

クラスの男の子たちが、驚きの声を上げる。

そうか……。

バスケ部の皆には二人で帰っているところや応援に行っているところをいつも見られていて、それに対して何も言われることがなかったー何か言われたとしても、佐々木くんの軽いからかいぐらいーから、てっきり宮本くんと一緒にいることは周囲にとって珍しいことではないと思っていたけれど……今思えば、クラスメイトに二人でいるところを見られたことって、ほとんどなかったかも。

「それで? いつから付き合ってるの?」

「あの宮本が、恋をするとはねえ」

男子生徒が囃し立てた時、「んなわけないやん」と不機嫌そうに低い声で否定する言葉が聞こえた。

「ただの友達に決まってるやん」

その言葉が耳に届いた瞬間、高ぶっていた気持ちが一気に冷めるのを感じた。

< 117 / 146 >

この作品をシェア

pagetop