きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
待ち伏せ
「それでね、遊園地を出る前に、お土産屋さんでこのぬいぐるみを買ってくれたんだ〜」

放課後の教室に鈴ちゃんのはしゃぎ声が響き渡る。

授業が終わった頃には明るかった空もいつの間にか藍色になっていて、一番星がはっきりと輝いていた。

少し前までいた私たちと同じようにお喋りを楽しんでいるクラスメイトたちはいつの間にか姿を消していて、教室には私と鈴ちゃん、そして勉強に勤しむクラスメイト数人だけが残っていた。

鈴ちゃんが私に向けたスマートフォンの画面をのぞきこむと、きっと買ってもらったばかりの時に撮ったんだろう、遊園地の門をバックに、ぬいぐるみを両手で抱きながら微笑んでいる鈴ちゃんが映っていた。

「うわあ……! かわいい……!」

大きな黄色いクマのぬいぐるみはフワフワで、思わず触ってみたくなる。

ただでさえ可愛いのに、ムチムチの頬とぽっこりしたお腹が、とても愛くるしい。

「かわいいねえ、それに大きいぬいぐるみは特別感があっていいよね」

「あ、それわかってくれる? 自分ではあんまり買わないから、欲しかったんだよね」

ふふ、と鈴ちゃんが微笑む。

その笑顔は少し恥ずかしそうで、でもとても嬉しそうでもあって、

「いいなあ、羨ましいなあ」

思わず本音を漏らした時、机の上に置いていた自分のスマートフォンが鳴った。

「ちょっとごめんね」

手に持っていた彼女のスマートフォンを本人に返し、自分のスマートフォンを取る。

ロックを解除して、来たばかりのメッセージを開くと、

【終わった】

シンプルな文面が浮かび上がった。
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