きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
隣の席
夏休みに入って1週間少し経った日、私は過去の誓いを果たすように、この前宮本くんと一緒に来たハワイアン料理のお店に、鈴ちゃんを連れてロコモコを食べに来ていた。

「ん~~~これ、本当に美味しいね」

鈴ちゃんは噛み締めるように言うと、「最高」と笑う。

「でしょ? 私も一度食べただけですっかり虜になっちゃって」

「本当だね。さすが噂になるだけあるね」

一口サイズに切ったハンバーグを、フォークにのせて口に運ぶ。

この前は噛む度に出てくる肉汁にすっかり気を取られていたけれど、かかっているソースも濃厚でとても美味しいことに気が付く。

「うん、やっぱり好きなものを心置きなく食べられるって幸せだなあ」


鈴ちゃんは、夏休みに入ってすぐ、彼氏と一泊二日で旅行に出かけた。

旅行先は彼氏の強い希望で、数種類の巨大ウォータースライダーがあるプールだったらしい。

「デブと思われたくないもん」

旅行先で水着を着ると決まって以来、鈴ちゃんは大好きなお肉を一切食べず、食事のほとんどは野菜で済ませるというとても過酷な食生活を送っていた。

「旅行、楽しかった?」

以前のトロピカルジュースに代わって注文したパイナップルジュースに手を伸ばす。
味を確かめるように少しだけ口に流し込むと、口の中いっぱいに、甘さと爽やかな酸味が広がった。

やっぱりこのジュースも美味しい。このお店、何から何まで美味しい。

「楽しかったよ〜!」

ヘトヘトになるまでウォータースライダーに並ばされたけど、と愚痴っぽくいうものの、鈴ちゃんはとても幸せそうで、本当に楽しかったことが伝わっていた。


「それで? 真凛は何してたの?」

一通り旅行の報告を聞いたところで、鈴ちゃんは私に問いかける。

夏だから、という理由で明るい茶色に染められた彼女の髪の毛が、身体の動きに合わせてさらりと揺れる。
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