依存妻と狂愛する俺
なかなか眠れない、未雷。
バルコニーに行き、煙草を吸おうとする。
「ゲッ…!ない!あーそうだ、さっきので最後だったんだ……買いに行くか!」

未雷は財布とスマホだけ持ち、近くのコンビニへ行ったのだった。

「んん…あれ、未雷くん…?トイレかな?」
ムクッと起きて、トイレに移動する。
コンコン……とノックをして声をかける。
「未雷くん…いる?開けるね」

いない━━━━━

「え?どこ?」
家中探すが、どこにもいない。
途端に不安にかられる。

「まさか!あの女の人と会ってるんじゃ…」

風愛はそのまま、外に飛び出した。

「はぁはぁ…」
エントランスに出て思う。
スマホ、持って来るんだった。と。
それに自分自身を見て、思わず苦笑いをした。
ネグリジェ姿で、しかも裸足だ。

「私…何やってんだろう……(笑)」
自分がバカバカしくて、涙が出てくる。

「風…愛…?」

そこには、煙草を咥えた未雷がいた。

「へ?あ…み、未雷…くん……」
「何やってんの?しかも!裸足じゃん!」
そう言って、駆け込んでくる未雷。

「未雷くんが家にいなかったから不安で……」
「だったら、電話すりぁよかっただろ?」
「うん、そうだね…」
「とにかく帰ろ?おいで?抱っこするから」
「うん…」
おとなしくしがみつくと、未雷は軽々抱き上げた。

「嬉しい!風愛がおとなしく抱っこさせてくれた!
いつもは恥ずかしがって、嫌がるのに!」
「重くない?」
「全然!風愛、軽いよ!びっくりするくらい!
ちゃんと食べてるよな?」
「ちゃんと食べてるよ!まぁ、未雷くんよりは量は少ないけど……」
「だよな。毎日一緒に飯食ってるもんなぁ」
「そんな軽い?」

「うん、女にしては軽い」

「………誰と比べてるの?」
途端に狼狽え、目が潤み出す風愛。

「は?」
「誰!?元カノさん?それとも……」
そして、未雷に責めるように言葉をぶつけた。

「風愛?」

「あ、ごめん…」
「俺…こんな風に抱っこしたの、後にも先にも風愛だけだよ!風愛も、知ってんじゃん!俺、彼女は後にも先にも風愛だけだよ。
女にしては軽いって言ったのは…昔、青沼を冗談で抱っこしたことあって、まぁ抱えることはできたんだけど、かなり手が痺れてさ……
青沼が女はこの三分の二くらいだって言ってたから。
風愛って、青沼の半分しかない…!
だから、女にしては軽いって言ったの」

「あ…そう…だよね……」

未雷は浮気をしないとわかっていても、不安で堪らない風愛。

未雷の“あの”笑顔が、風愛の頭の中を占めていた。
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