依存妻と狂愛する俺
居酒屋を出た、課長。

「こんばんは、課長」
「え?鷹司くん?どーしたのー」
酔っている、課長。
足取りも危うい。

「課長、誰もいない所で話をしましょう」
いつもの笑顔の未雷がいた。

赤星が用意した、ある廃ビルの一階。

「もしかして、仕事の話?
君が月曜日って言ったから、飲んじゃったよぉー」
酔っている為か、課長は廃ビルに連れてこられたことにも何の違和感も感じていない。
気楽に未雷に話しかける。

「大丈夫ですよ!後は、僕に任せてください」
「フフ…そうだねー、鷹司くんは優秀だからー
凄いよなぁー、御曹司ってー!」
「は?」
「正直、御曹司だからウチの会社に入社できたと思ってたんだー
でも実際は、こんな優秀な男だったなんて」

「“俺は”優秀なんかじゃねぇよ?」

「え……」
突如変わった、未雷の雰囲気と口調、言葉遣い。

課長の身体に緊張が走る。
未雷が今まで見たことない程に、恐ろしく悪魔のように見えたからだ。

物腰が柔らかい未雷からは、想像できない姿だ。


「俺が優秀じゃなくて、お前等が無能なんだよ。
まぁ、特に!お前のような奴がなぁ!!?」

「鷹司くん…ど、どう…したの…?
…………いつもの君らしくないなぁー」
課長は怯えながら言った。

「あとさぁ!!
タメ口、やめてくんない!?」
「え……」

「タ、メ、ぐ、ち!!
俺さぁ!自分が認めた奴にしか許してないんだよ、タメ口も俺の中に入るのも…!
お前みたいな、無能にタメ口使われるなんて、一番不愉快!」
「でも、僕は君の上司……」

「はぁぁ!!?
それこそ、無能が言うセリフだな。
肩書きとか年齢で、上下関係を決める奴。
そうゆう奴こそ、無能が多い。
もういい?
とっとと、消えろ!?無能!!」

未雷がここまで言うと、赤星が仲間を連れぞろぞろと出てきた。

「な、なんなんだ…こいつ…等…」
顔を引きつらせて言う。

未雷は煙草を咥え、壁側に移動する。
赤星が未雷の煙草に火をつけた。
壁に寄りかかり、赤星達が課長をなぶる様子を無表情で見つめていた。

反撃もできないまま、簡単にぼろぼろになぶられていく課長。

「呆気ねぇな……」
「え?」
「ついさっきまで陽気に俺と話していた奴が、今ではぼろぼろな肉の塊だもんな」
「そうですね」

マンションに帰りつき、風愛を抱き締めて眠る。
風愛の甘い匂いが漂ってきて、先程までの不愉快な気持ちが落ち着いてくる。

未雷は幸せな気持ちに浸りながら、眠りについた。
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