依存妻と狂愛する俺
「おい!なみちゃん、ライに謝って!すぐに!!」
青沼が慌てて、なみと言われた女性に言う。

「えーー!なんでぇー!!」
なみは、事の重大さに全く気づいていない。

「風愛ちゃんに“この女”なんて口聞いちゃいけないんだよ!?」
なみの肩を掴み、問いただすように言った。

「ちょっ…キラ!!痛い!!」
「いいから!!謝れ!!」
「わかったから!!離して!!」



「━━━━━━━━━もう…オセーよ……」



「え?ら、ラ…イ……?」

「未雷くん、ほ、ほら!あっちのイルミネーション見に行こ?」
青沼が怯えて、未雷に向き直る。
風愛も、慌てて未雷をここから連れ出そうとする。

「煌」
「はい」
「“それ”連れてこいよ」
「…………はい」

「え?え?
キラ、どこ行くの?お店行こうよ!」
「………」
ここでやっと…重大さに気づいた、なみ。
手を引く青沼に、焦ったように声をかける。

青沼は、無言でなみの手を引く。

「未雷くん、やめよ?
せっかくのデートだよ?」
未雷も風愛の手を引いて、歩みを進めている。

「そうだな。せっかくのデートが台無しだな。
益々、許せないな…この女!」

「え?あ、違うの!そんな意味じゃなくて!
未雷くん、そんな怒ることないでしょ?」

「は━━━━━?」
「ひゃぁっ!!ちょっ…未雷く…急に止まらないで!!」
急にピタッと止まった未雷の背中に、顔を突っ込む風愛。

「風愛」
「え……あ…」
未雷の雰囲気が黒く落ちていた。

「この可愛い口は“誰の”味方してる?」
風愛の顎を掴み、グッと顔を近づける未雷。

「味方…なんて…して…ない、よ……」
あまりの恐ろしさに、足がガクガクしている風愛。

「俺の愛する風愛の事を“この女”呼ばわりしたんだよ?そんなに怒ることだろ?
俺と風愛は“特別”なんだから」
「ご、ごめん…ね…」
「風愛は、雄飛のとこに行ってて」
「え?」

「返事は?」
「う、うん」

人気のないとこにつき、未雷は青沼となみを連れて更に奥まで行ってしまう。
風愛は、雄飛に電話をかけた。

『ふうちゃん?』
「雄飛くん、今大丈夫?」
『うん、どうしたの?』

事情を説明すると、すぐに駆けつけてきた雄飛。
「ふうちゃん!」
「あ、雄飛くん!ごめんね、忙しいのに……」
「ううん。ふうちゃんを一人にはできないしね!」
「未雷くん、スッゴく怒ってて……」
雄飛を見て安心したように目を潤ませ、あっという間に涙が溢れてくる風愛。

「ふうちゃん、泣かないで?」
あやすように頭を撫でる、雄飛だった。
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