君と僕との相対性理論
愛のない婚約
神楽坂(かぐらざか)といえば、この世界では有名だと思う。名前を聞けば、ああ、あそこのグループかって誰もが思うだろう。

それでもこの世界では小さい方で、まだまだ上のグループは沢山いる。
それに負けぬよう、グループが潰れぬよう、〝繋がり〟というものを大事にしなければならない。

分かってる、そういうのは。
私だって今までそう教えられて暮らしてきた。だからこれに従うのは当たり前だし、しなければ神楽坂が潰れてしまう。
だから、分かってる。
分かってはいる。
だけどこうも現実を突き出されれば、唇を噛み締めてしまうのは当然のことで。


とある部屋で、着物を身につける私は今すぐにでも逃げ出したかった。──…こんな結婚、したくない。
それでも従わなければならないから。


神楽坂(かぐらざか)和夏(わか)と申します」


頭を下げれば、彼も頭を下げる。


西条(さいじょう)(ましろ)です」


西条雪。女のような名前のその人。




政略結婚…。




私は多分、この人と結婚する。
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