それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

高校生みたい

「高校生みたい」

初めて先生を見た時の、感想だった。


4月5日。高校3年生として、最初の登校日。
昨年度とは違う新しい教室のドアをあけると、教室中ががやがやとしていた。

珍しいなあ……こんなに騒がしいなんて。

私が通う高校では、2年生から3年生に進級する時にクラス替えは行われない。
だからこそ、昨年度1年間一緒に過ごしてきた、よく知っているクラスメイト達―いつも落ち着いているクラスメイト達―のいつもとは少し違う様子に違和感を覚える。

皆、高校3年生になって初めての登校だから、なんだか落ち着かないのかな。
いや、けれど、学年が変わっただけで、クラスのメンバーは変わらないしなあ……。

クラスの雰囲気に少し首を傾げつつ、念のため黒板に貼りだされた座席表を確認してから自分の席へ向かう。

机と机の間の通路を歩いていると、席にたどり着く前に、私の前の席に座っている親友の横尾美羽(よこおみう)が、操作をしていたスマートフォンから顔をあげた。

沙帆(さほ)、おはよ!!」

「おはよ~」

教室に差し込む朝日の眩しさに目を少しだけ細めながら、机の上にカバンを置く。

「ねえ、今日の教室、いつもよりうるさくない?」

美羽に問いかけつつ席に座る。

「そりゃそうだよ!!」

美羽は私の質問に、少し食い気味に答える。

「今ね、連絡しようとしていたんだけど」

美羽は、SNSアプリのトーク画面を私に見せる。

「副担任、鈴木先生じゃないんだって!」

「へえ、変わるんだ? 誰に?」

鈴木先生とは、2年生の頃、私たちの副担任だった先生だ。

クラスメイト同様、基本的に2年生から3年生に進級するときは担任の先生も副担任の先生も変わらないはずなのにな。

「それがね」

美羽は、ふふっと嬉しそうに笑いながら続けた。

「新人の先生らしいよ!!」

「新人?」

「うん、しかもね、超イケメンらしい~~!」

美羽は頬を両手で包みながら、満面の笑みを浮かべた。

「それ、本当なの?」

「うん、本当。今朝、たかちゃんが職員室で見たんだってさ!!」

たかちゃんとは、私たちのクラスの学級委員長だ。

「なんだ、たかちゃんの情報か」

「『なんだ』って、何よ?」

私のリアクションが気に入らなかったのか、美羽は少し不服そうに、口を尖らせた。

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