それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「先生」

私は先生を見つめながら続けた。

「私ね、今更だけど、思っちゃった。もしかしたら、自分が思っていたよりもずっと、周りの人は、私のこと、見ていてくれているのかもしれないって」


その言葉を口にした瞬間、私の目からは、ずっとこらえていた涙が零れ落ちた。


翼、付き合っているときに、気づけなくてごめんね……。

涙でぐちゃぐちゃになった顔を、両手で覆う。

「好きになってくれて、彼氏になってくれて……ありがとう」

手で顔を覆ったまま、私は机に突っ伏す。

すると目の前に座っていた先生は立ち上がって、私の隣に移動すると、ゆっくりと座った。

先生は何も言わずーまるで泣いている赤ちゃんをあやすようにー丁寧にそっと背中をなでる。

先生の手は私にぬくもりと少しの安心を与えてくれて、余計に涙が止まらなかった。
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