それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「先生が戸締り担当であることと、私たちが残ること、何の関係があるわけ……?」

「だーかーら! 俺、戸締り担当だから、最終下校時間まで残らないといけないわけ。どうせならお前らも付き合えよ」

「はあ??」

「だって俺だけ残るなんて、つまんねーもん」

それにお前だけ帰るなんてずるいじゃんか、と嘆く先生に、私は目が点になる。

この人、本当になに言ってるの……?
そもそもずるいとか、意味わかんないし。

私は生徒で、この人は先生。

生徒を自分の仕事に付き合わせるって、どういうこと……?

こんな先生、いる……?


「ほら、横尾も残るんだし、お前も残れ」

「そうだよ、英語教えてよ、沙帆」

なんだかなあ……。
言いたいことはたくさんあるんだけど……。

「わかったよ」

私はため息とともに、返事を吐き出す。

言いたいことは色々ある。
思うことも色々ある。

けれど、きっとこの二人にわかってもらうように言い返すほうがめんどくさいや……。


「おお、やったな!」

「先生のおかげです!!」

思い通りになってハイタッチをして喜んでいる二人の傍で、私は机に突っ伏した。


「そういえばお前さ」

先生が私の頭をポンと叩く。

「課題ノートのコメント、ちゃんと読んでんの?」
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