それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

見ているから

「あれ……」

次の日、理科室で授業を終えて教室へ戻る途中、私は教室へ向かう足をピタリと止めた。

「どうしたの?」

「ノートが無い……」

同時に、実験台の下に置いたまま、取り出すことを忘れていたことに気づく。

「ごめん、きっと理科室に置き忘れてきちゃった。先、教室戻ってて?」

一緒に歩いていた美羽に告げると、私は慌てて来た道を戻る。

ああ、もう、ツイてないな。
理科室、まだ開いているかな。
鍵、閉められちゃっていたら、わざわざ職員室まで、鍵を取りにいかないといけないよなあ……。

それは面倒過ぎる。
通りすがりの人たちの視線を感じながらも、私は全速力で理科室へ向かった。

「あっ!!」

理科室が見えた時、ちょうどドアに鍵を閉めようとしている畑中先生の姿が視界に入った。

「先生! 忘れ物した!」

叫びながら先生の元へ駆け寄る。

「あー、よかった。間に合った」

ぜーぜーと肩で息をする。

こんなに本気で走ったの、いつぶりだろう。

「鍵、貸して」

「ほい」

先生はふざけて、自分の頭上まで鍵を持ち上げた。

「貸してってば」

「俺の手から、取れたらな」

「ちょっと、もう面倒くさいってば、早く貸してよ」

私がその場でジャンプをすると、先生はそれに合わせて、手を上にあげた。

「ねえ、本当に面倒なんだけど」

「お前なあ、その何でもかんでも『面倒だ』って言うの、やめろよな」

きっと普段の私なら、聞き流せた。
怒ったり言い返したりすることの方が面倒で、エネルギーを使うって、わかっているから。

それでも、今日は、止められなかった。

「……いい加減にしてよ」

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