それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

先生になった理由

「あれ、先生?」

夜ご飯や入浴を終えて、修学旅行最後の夜を恋バナで大盛り上がりしている中、喉が渇いて自販機までジュースを買いに来た私は背中に声をかける。

先生は、ぼんやりと外を眺めていた。

「吉川か」

「うん。どうしたの、こんなところで」

「多分、お前と一緒。自販機にジュース買いに来た」

先生は、おそらく買ったばかりのペットボトルのお茶を、掲げて見せた。

「部屋に帰ろうと思ったんだけど、海が綺麗だから見ていた」

ほら、と先生が窓の外を指差す。

「ほんとだ」

ホテルの光が少し漏れてほんのりと照らされ、キラキラ光る海には、夜空に浮かぶ満月が映っていた。


「ねえ、先生」

真っ直ぐに窓の外を見続ける先生の横に並び、私はそっと静かな声で、切り出す。

「なに?」

「変なこと、聞いてもいい?」

「変なこと? 別にいいけど」

何でも答えるけど、と言う先生は、やっと窓の外から私へ、視線を移した。

いつもとは違う、沖縄にいるからかな。

それでも、2人きりだからかな。

今なら聞ける気がして、私は、心のどこかで、出逢ってからずっと、気になっていたことを問いかけた。


「先生は、どうして“先生”なったの?」

聞いてみたかった。
どうして、“先生”という職を選んだのか。

知りたかった。
どうして、他の先生と違って、成績の結果と同じぐらい、努力する姿勢を褒めてくれるのか。

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