それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
去年だって、別に怒られたり注意されたりする点はないと思っていた。

成績だって、クラスで真ん中ぐらいだったし、問題行動を起こして職員室に呼び出されることだってなかったし。

それでも……

「数学の成績が悪いとか、やる気が見えないとか、結局色々言われちゃったんだよなあ……」

ああ、もう、逃げ出したい。
いっそのこと、私抜きで面談してくれないかな。
そっちのほうが、ずっと気楽だ。

「そっか、去年も担任は中野先生だったんだ」

「そうだよー、それで、色々ネチネチ言われたんだよ」

私の言い方に、先生は苦笑した。

「まあ、中野先生も、吉川のお母さんも、吉川のことを思って言ってくれているんだけどな」

「……どうせ先生には、生徒の気持ちなんてわかんないでしょ」

「わかるよ、俺は三者面談だったけど、それでもなんとなく嫌っていうか、憂鬱だったから」

けどさ、と言いながら、先生はもう一度私の背中を力強く叩いた。

「今回は、副担任がこの俺じゃん!! 大丈夫、ちゃんと吉川が頑張っていること、お母さんに伝えるから。ほら、前、約束しただろ?」

“お前の親だろうと、学校の先生だろうと、俺がちゃんと言い返してやるから! 『吉川だってめちゃくちゃ頑張っているんだぞ!』って!”

先生は、ドン!と自信満々に自分の胸を叩きながら、当時言ってくれたものと全く同じ言葉を口にした。

「だから、お前はなにも気にせず、“褒めてもらえるんだ~”ぐらい、気軽に楽しみに、面談まで待っておけば良いよ」

先生は立ち上がって私の頭をポンポンと叩くと、教室へ向かった。

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