それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

私の夢

「それそろ屋上へ移動しようか?」

アイスを食べ終え、翼たちと夏期講習の過酷さについて語り合っていると、1人の男の子が立ちあがる。

「もうそんな時間?」

「あっという間だったねえ」

「やばい、めちゃくちゃ楽しみ!」

机の上のごみを片付け、6人揃って食堂を出ようとしたとき、校内放送を知らせるチャイム音が響き渡った。


「えー、生徒の呼び出しを行います」

耳慣れた声に、私は反射的に構える。


まさか……まさか、今、呼び出したりしないよね?
そもそも、今、呼び出される用事ってないよね?

夏期講習は今日で終わったし、明日からは待ちに待った夏休みだしー…
私じゃないよね?

「3年1組、吉川さん。3年1組、吉川さん。今すぐ、職員室、畑中のところまで来てください」

私の祈りは届かなかったのか、自分の名前があてはめられた呼び出しの定型文が放送から流れる。


「えー…どうして今なのー…」

先生、さすがに今はないでしょ。
タイミングが悪すぎるよ……。
そもそも、本当に用事あるの……?

「沙帆、また畑中から呼び出されているじゃん」

私の前を歩いていた翼が、笑顔でからかうように言ったけれど、口調からはどことなく不満さが滲み出ている。

「ねえ、どうして? 呼び出されるような用事、今更ある? 明日から夏休みだよ?」
先生からの突然の呼び出しなんて、もうすっかり慣れっこだけど。
それでも先生、今はおかしくない……?

「無視しちゃえば?」

眉間にしわを寄せながら文句を言う私に、「もし何か言われたら『聞いていなかった』っていえば良いだろ」と翼が答える。

「実際、帰っている生徒だっているわけだしなあ」

隣にいる男子生徒の言葉に、「そうだよね……」と頷く。

確かに、この時間もう学校にいない生徒もいるわけだし。

もし夏休み明けに怒られたら、聞いていなかったフリをすればよいかな。

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