夜桜
屯所に戻り、私に剣術の稽古をつけてほしいという隊士達に応え、指導をしていた。

「刀で斬ろうと思うな!体で斬れ!」

私が言うと隊士は叫び、相手に斬りかかっていった。

「精が出るな、誠守君。」

「近藤局長。」

隊士の稽古風景を眺める近藤局長は、私に聞いた。

「誠守君が見た新選組の在り方を知りたい。」

いきなりそんなことを聞いた近藤局長には驚いたが、私はすぐに答えた。

「誠の武士が集う場所だと思います。 誠の旗のもとに一つ。隊士の意志は強く、ちょっとやそっとのことで崩れるようなものではありません。それは、この組織の上に立つ近藤局長や土方さんあっての志。 武士道を重んじ、己の道を進む新選組の生き様は、私の思い描く武士そのものです。」

「誠の武士…」

近藤局長は再び尋ねた。

「武士とは、どのような人間を指すものだと思う?」

この質問に答えるにも当然、時間なんていらなかった。

「武士という者は、お家の生まれは関係ありません。頑なに忠義を守り、己の道を行く志を持った人間のことを指すと思います。それは、新選組に集う人間が値します。」

近藤局長は笑い、私の肩を叩いた。

満足げに屯所へと戻って行った。
近藤局長の行動は読めないものがたまにある故、少し難しい。
だが、凛々しい瞳の奥には、土方さんと同じ強さがある。

新選組を引っ張って行くのに相応しい人物に適していることを、改めて感じた。

「誠守さん!手合わせお願いしたく存じます。」
「よし、来い!」
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