甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
7.「あなたが、好き」
小鳥のさえずりが遠くで聞こえ、目が覚めた。

身じろぎしようとして、うまく動けない状態に気づく。

ブラインドから漏れる朝の光を頼りに視線を動かすと、目の前にはむき出しの広い男性の胸があり、私は彼に両腕で抱きしめられていた。

郁さんが私に着せてくれたらしき大きめの白いシャツの胸元を見つめ、覚醒しきっていない頭で、昨夜帰宅してからの出来事を思い出す。
 

帰宅後、自身の両親に連絡するから先に休むようにと郁さんに告げられた。

恋心を自覚したうえ、飯野さんの件で心が乱れていた私は素直に了承した。

入浴し、大きなベッドに横になる。

彼がやって来るまでに眠ってしまいたいのに、一向に睡魔がやってこない。

あれほど魅力的な男性の妻になり、契約上の結びつきとはいえ大切にされている自覚はある。

恋情なんて不要だと思っていたのに、欲張りになった私は彼の心を求めてしまう。

興味があると言われたし、客観的にみても嫌われていないと思う。


――でも、それだけだ。


私を求め、体に触れるのは後継者が必要だから。

あの人の本音はあの人だけのもので、私には知るすべがない。

考えれば考えるほど胸が痛んで切ない。

体を求められて胸がいっぱいになり、心が震えたのは郁さんをもう好きになってしまっていたから。

この人だから抱かれたいと心の奥底ではすでに思っていたのだろう。
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