郁さんと想いを通わせて一カ月半ほどが過ぎた。

十月初旬を迎え、朝晩がずいぶん冷え込むようになった。

部屋を暖めるとその心地よさに最近の私はすぐ眠くなり、ウトウトしてしまう。

郁さんは相変わらず忙しい毎日を過ごしている。

夜中にふと目が覚めて、私を抱きしめる腕の温もりに泣きたくなる。

その度、彼の存在の大きさを思い知らされる。


『可愛い』


『俺の、沙也』


普段の冷静な彼からは想像もつかない甘い台詞には今だに慣れず、鼓動が簡単に乱される。

妖艶な眼差しに魅入られながら、この幸せな時間がずっと続くようにと本気で願う。

どうしてこんなに魅力的な人が私を好きになってくれたのかわからず、時折不安になる。

これほど深く誰かを想った経験はなく、世の中に流れる恋愛ソングや物語の意味をこの年齢になってやっと理解した。

嫌われたくない、ずっと一緒にいたい。

彼の全部を知って独占したい。

想いを返してもらえるだけで幸せなのに、どんどん欲張りになる。

好きすぎて、怖いなんて感情を初めて知った。

こんな身勝手な感情を彼に知られたくない。

独占欲と想いの強すぎる妻なんて鬱陶しがられるかもしれない。

勤務先には結婚した旨を先日やっと内々に報告した。

婚約を以前から伝えていたせいかあまり驚かれなかった。