甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「舞も会いたがっていたんだが、充の外せない行事があったからな。舞はお前の結婚をとても喜んでいたし、沙也さんの体を心配している。初産だし、仕事もあるし大変だろうってな。なにより俺たちの実家のしがらみもあるからな」


「ああ、そうだな……義姉さんにお礼を伝えてほしい」


兄は鷹揚にうなずく。

小さい頃から享受してきたこの環境が特殊なものだと、ある程度理解している。

物心ついた頃から、将来は兄とともにこの会社を背負っていくのだと教え込まれて育ってきた。

特にその件で腹が立つとか反抗したいと思った記憶はない。

仕事と妻への愛情が深い親父を一社会人として尊敬しているし、兄も然りだ。

違う環境で育ってきた者同士が出会って家族になるのが結婚だが、俺の場合は明らかに沙也に無理を強いている。

しきたり云々とうるさい家ではないが、それでも親戚連中は俺がずっと独身でいる現状に事あるごとに不満を漏らしていた。

結婚をした今でこそうるさく言わなくなったが、今度は後継者の誕生を強く願っている。

両親は親戚ほど後継ぎについて言及しないが、やはり祖父母からの催促じみたものはあるらしい。
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